唐鳥えるさま、遅くなって申し訳ございません。名前についてのお答えです。

＞それは、「妖女サイベルの呼び声」や「陰陽師」などでおなじみの、「名前を知ると相手を支配できる」という概念と関係ありますか？

私は「妖女サイベルの呼び声」や「陰陽師」を見たことがないので、それが意味するところを断定できないのですが、「名前を知ると相手を支配できる」ということであれば、私の解釈はそういう意味ではありませんでした。
相対を求めるというのは、自分ひとりでは成立しない関係性であるということです。そのためには自分だけを認識していればいいというものではなく、相手を自分の立場との関連において見る必要があるでしょう。
まして、それが所有や支配となれば、人は相手が自分と同じ存在であるとはまず見ないと思います。その時『名前』が、相手を支配するための力ではなく、相手の本質を覆い隠すヴェールであるように思えたのです。

先に存在があり、それに名が付けられる以上、名が存在そのものになるとは思えません。やはり、その存在をどう見るかによって、名前という意味が付けられるのでしょう。
トムは色々な名で呼ばれていますが、それは各種族が彼にそのような意味を託しているからです。そういう意味で、名とはその本質の一面を捉えたに過ぎないのではないかと思います。

そこでトムは、フロドに『あんたはまだ私の名前を知らないのかね？答えはこれだけだ。あんたはわたしに誰かというが、そいういうあんたはだれなのかね？あんたはただひとりで、あんた自身で、そして名前なきものではないかね？』と答えています。
これは、フロドが『トム』としてわたしを見ているから自分は『トム』なのだという言葉と共に、様々な名で呼ばれる『トム』も名もなき者として見ればただの一人、それはフロドとて同じことだという意味に聞こえます。
つまり相手を名ではなく、存在として観察した時、それらは支配も所有も離れて、自身にのみ属したものとして映るのではないでしょうか。
トムはそうした目を持っているように思えました。