皆さん、大変素晴らしいです、とても興奮しています。もう孤独な翻訳作業とは比べ物にならない醍醐味があります！
北国のあきさん、瀬田訳の補完、ありがとうございました。助かります！
aiwendilさんの視点から、であごるさんの視点までの流れを追わせていただきました。一回まとめさせていただいてもよいですか？（ただし、あくまでもテンポラリーということで。お題は、open
questionとして、皆さんのご意見をお待ちしております。）
まず、aiwendilさんと北国のあきさんのご指摘、
＞根拠に乏しい直感ですが、masterとはmaster
of himselfなのではないでしょうか。彼自身の、自分自身の主人。よって何ものにも支配されることがなく、何ものも支配しない。
そして、さんちゃんさんが指摘された、ゴールドベリとガンダルフの言葉。
＞He is the Master. (ゴールドベリ）
He is his own Master. (ガンダルフ）
にまず大切な鍵があると、私も思います。また、皆さん全員が指摘されたポイントは同じですね。つまり、「トムは彼自身の主人である。」ということは、他の何者の支配も受けない、絶対的自由を享受している存在。 それが、
he has no fear、つまり、「彼は恐れを知らない。」ということを表していると考えます。ただ、to
be a master of oneself は、理性によって自分をコントロールできる、to
be one's own master は、ガンダルフも使った表現で、「自分自身の主人」ですから、お二人の意味されるところに合うのはこちらの表現のですね。
となると、トムは何者の支配も受けない、自分自身の主人。それで彼の一面はわかりました。しかし、まだ
master in a peculiar way を表現しきれていないように思います。何故ならば、それだけでは、master という言葉についてくるもう一つの疑問、自分自身の主人であるトムが、では他者を支配することはあるのか、つまり、トムにとっての被支配者は存在するのかという疑問には直接的に答えていない。 （まるで記号の羅列のようにちぐはぐで無味乾燥なんです、私の日本語…もうご存知ですよね。だから、なお更、皆さんとの共訳にもえてるんです。）
そして、さんちゃんさん、月猫さん、唐鳥えるさんのご指摘に移ります。 それは、master 本来の「支配するもの」、という意味について。英語には、力学的関係、支配、被支配のニュアンス、それもはっきりしていて強いものが大変多くありませんか？ 例えば、lord もそうです。
＞英語でmasterと聞けば、そこには「何かを所有する／支配する」というニュアンスが含まれているようです。しかし、Evenstar様が御指摘の通り、文中で教授は、トムについて「所有欲・支配欲」の存在を否定しておられます。そのため、文頭でわざわざ'master
in a peculiar way'と述べたのでしょう。
＞ここでも、Master でありながら、'Nothing
belongs to him.'（彼は何も所有していない）であるという、彼の特性が示されています。
同感です。皆さんの考察が一連のものとなり、とてもクリアな意味が浮かび上がってきたように思うのですが、いかがですか？ 以下は、私自身の解釈です。
《トムは、彼自身の主人であり何者の支配も受けない（だから、恐れを知らない）。と同時に、何者も所有しないし支配もしない。》
そして、であごるさんの考察へと連なります。
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では、トムが持つ本来の名は？と考えると、それが無いのです。主人としての支配や所有というのは相対を求めることです。つまり他との関係において自分を現すことで、そのためには名が必要になるのでしょう。しかし、'master
in a peculiar way'変わった主人（意訳しすぎですが）であるトムは、自分を含めたあらゆる物を絶対的に見ているように思えます。
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これを読んで、大変興奮しました。というのは、この解釈と合致することが、私が選択した抜粋箇所の前に実は出てくるからなのです。共訳フェロウシップを立ち上げるにあたり、どの部分を抜粋するか、少し悩みました。テストケースですし、核心部分だけをと。しかし、であごるさんの考察を読んで考えなおしました。共訳するかはともかくとして、資料としてこちらにアップいたします。（決して出し惜しみしたのではないのです。しかし、「核心部分」の選択を誤ったかもしれません。ごめんなさい！！）
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誰の支配を受けているとか所有であるとかいう以前に、存在そのものを見るトムにとって、名前はあってないようなものなのだと感じます。そして万物が万物の中で如何なる作用を受けていようと、そこにある実在性を見る彼にとっては、自分が主人であると共に、他の実在全ても、それぞれの主人であるという認識があるのではないでしょうか。だから、トムにとって万物は支配の対象にも所有の対象にもなり得ないのだと思います。またそれは、後に議題としてあがるであろう、彼の不干渉性にもつながることに思えます。
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なるほど、だからトムには「本来、（彼のアイデンティティーにずばり合致する）名前がない」。 私は、今までこのことをぼんやりとしか認識していませんでした。であごるさんの考察を読んで、霧がはれたようです。
皆さんはいかがですか？
＞これを踏まえて、'master in a peculiar way'には、支配や所有の概念を持たない主人、つまり『風変わりな主人』という意味を含ませてみたいです。
Master in a peculiar way＝風変わりな主人、素敵です。訳語の選択として、個人的にこれを候補に推薦させていただいても良いでしょうか？
さて、それでは皆様のお話の続きを楽しみにしております。
最後にお知らせです。トールキン教授がヘイスティング氏宛ての書簡の中でボンバディルについて語っている書き出しの部分を、「１５３番の手紙から：『トムの名は？』」のタイトルでアップします。アイディアのある方はどうぞ、これについてのサマリーを返信の形でお願いしますね。遠慮はなさらずに、どしどしどうぞ。